地溝油と言う物をご存知かな? 有名な食用油であるが"ブランド品"ではない。一時某国を騒がし、日本にまでその悪名が伝わったので一部の方はまだ記憶にあるかもしれない。露店や安いレストランで使われる食用油に「地溝油」と呼ばれる廃油が主に使われていると言うとんでもない実態が暴露された為、某国では騒然となり庶民に戦慄が走った。今まで聞いた事もない油名・・・出処元を知れば、普段偽物食品に慣れてしまった某国人ですらひっくり返る内容だった。

 地溝油とは、レストランや家庭で使われ下水に捨てられ下水管や汚泥のたまり場などで堆積した廃油が原料で、これを回収し再生した油の事である。回収後ゴミや油以外の成分を取り除き、最後に色と香りを調整して食用油として再び流通させるのである・・ほんま よくやるよ!。しかし、下水管やどぶに溜まった油は見栄えを変えるだけでも手間がかかりそうで、反って原価が上がるのではないかと思ってしまう。でも下水管や汚水処理施設には量だけは相当有るようで再利用の価値はあるようだ。日本でも食用油の再利用はあるらしいが、流石に食用としては使われず石鹸類や燃料用として利用するらしい。食用として再生するところが某国の凄いところだ。

 このニュースが出た頃、ネットにも様々な意見が掲載された、中には、自笑気味に「わしらはこんなん食べているから“ゴキ○○民族なんて言われるのよ」や、怒り心頭で「もう何も信用できない!犯人は発見しだい全員銃殺にすべき!」。また開き直り気味に「普通の食用油より地下で寝せていた分、地溝油はコクがあって美味しいはず」など反応も様々である。誰も死んでいないので刑事事件にならないだけで、業界の多くの人がやっている事だそうだ。

 一方、粉ミルク・メラミン事件の方は、赤ちゃんが死んだり、障害が出たりしたので刑事事件となった。乳幼児の死亡や高度障害で発覚したこの事件は、当初国営の有名ミルク製造会社「三鹿」が業績を上げるために 故意にメラミンを入れて見せかけの蛋白質量を増やすという組織ぐるみの犯罪だったが、捜査過程で三鹿の女性社長は、「原料搬入業者の仕業だ」と責任のがれ、搬入業者は、「乳業農家が悪い!」、農家のほうは牛の飼料に問題があったのかも」と次々に責任転嫁するものだから ついには牛までが「おらが食べている牧草が悪い」牧草は、「おらが育った土の質が悪い」と遂には”土の責任”にまで至った。流石に某国政府も”土”に逮捕状出すわけにはいかないので、この国有企業女社長に執行猶予付の死刑判決、搬入業者に死刑判決が出て決着をさせた。同じ悪い事をしても偉い人には執行猶予が付くのである。

 結局このメラミン騒動、この三鹿1社だけでなく酪農農家や他の大手ミルクメーカー「蒙牛」「光明」「伊利」でもみんな大なり小なりやっていて人民は呆れ顔、その後スーパーの粉ミルク売り場から国産品が消えて行った。そりゃそうでしょ、日本に例えれば大手「○治・〇永・〇印」みんな使っていましたみたいな話で国産品信用度=0.00%って当たり前の結果である。

 この他にも理髪店で集めた頭髪で醤油を作る、もやしは漂白剤につけて漂泊してから販売・・・まだまだ切がない程色々出てくる。その手口の数々、本当に素晴らしい?のだ、こんな手間掛けるんだったら、まともに材料買って加工した方が安くないですか?と言いたくなる。

 某国では、農民も含め庶民の食材に対する信頼は、極めて低い。野菜などは、濃い農薬がまぶり付いていることを前提にして流し水で丁寧に時間をかけて洗浄する。農民は、自分たちの知り合いが 甘くない果実にブドウ糖注射をするとか 病気で死んだ豚を闇で業者に販売したとか色々知っているので、自身も用心深いのである。また合成調味料は滅多に使いたがらない。所詮工業製品であり怪しい原料が使われているはずだからである。日本から輸入の味の素でも使いたがらない。生姜、ニンニク、胡椒、八角など自然なものでないと安心できないのである。

 3歳ちょっとででおっぱいが大きくなってしまった我が娘を心配して病院に連れて行った某国人パパ、医者から「普段よく食べるものはなあに?」と聞かれて漸くピンときた。彼女は上海蟹が好きで、ほぼ毎日食べていたのだ。蟹には養殖業者が成長ホルモンを与え大きくするので、食べ過ぎると人間の成長も促進され胸が膨らんでくるという訳である。成長ホルモンを使うのは、蟹だけではない海老や川魚、鶏にも使われている。だから 子供に鶏肉を食べさせない家庭が多いとも聞く。じゃ 豚や牛は安心なの?? 少なくとも豚は、あまり安いところで買わないほうがよい。病死した豚を安く買い取る業者はどこにでもいて、衛生局の目をごまかして死んだ豚を売りさばく。拝金主義の業者はどこにでもいるので安心できないのだ。ここ20年で消費量が激増し値段が上がった羊肉、なんと豚肉より高くなってしまったが為、有名な羊肉のしゃぶしゃぶ屋が豚肉に羊肉風エキスを塗って羊肉として販売していたという驚くほど“せこい”事件が発覚し某国には信頼して食べれるものがないのか!と食品への信頼は地に着いてしまったのだ!

 私の場合、野菜は、安い自由市場、肉は高いが信頼のできる日系スーパーで買う。養殖の川魚は、薬臭いのでレストランでもなるべく食べないし 自分でもほとんど買わない。気持ちの問題かもしれないが買って料理するなら海の魚に限っている。しかし 海の魚は新鮮さに欠け魚の種類も少ない。買う時は、魚の目を見ればある程度鮮度がわかるが、ヒラメ 黄魚 太刀魚など解凍されて何日も経過したような“うつろな目”と睨らめっこしたら、大抵の場合お魚クンに「また今度ね!」となる。



このお魚たちは、氷のベッドでいったい何日寝ているのだろう・・・私の場合 目がキラキラしていない限り買わないことにしている。

 某国首都や天津で何年か前から人気のレストランが 河魚の焼魚料理店、5種類ぐらいの河魚からチョイスして 味付けもチョイスできて焼いて出てくれる。半身ずつ違う味で仕上げることもできるので 特に女性に人気だ。ここでメニューに並ぶ魚がすごい。ナマズ、ライギョ、草魚など雑食の河のギャング達である。日本ではこうした魚は、食卓にあまり登らない。ただし こいつらは、生命力が強く成長ホルモン無しでも充分成長できるのである意味安心かもしれない。試しに食べてみると薬臭く無く案外美味しいのだ。特にブラックバスはこちらでは高級魚で、とても美味である。


 ライギョについては、小学校のころ思い出がある。父親の仕事の関係で熊本に住んでいた頃、付近に立派な池をもつ豪邸があった。庭の池には、大小の錦鯉が優雅に泳いでいたのである。近くに寄れば、それを眺めるのが楽しみだったが、ある日池を見ていたら、ご主人と思われる人相の悪い親爺から「こらっ!!何処のガキだ?・・あっちへいけ!」と理由もなく怒鳴られた。とっても気分を害した私、そのクソ親爺に何か御礼をしたいと考えていた。

 自転車に乗ることを覚えたばかりの私、自転車で遠出をすることが多くなった頃である。ある日、随分遠くまで走り込んだ農村の一本道で、大きな川に掛かる橋から小舟が網を流して魚を取っている様子が見えた。鮒や鯉など大きな魚が沢山取れていたが、それとは別に船から放り出され地べたに捨てられた大きな魚が、10匹ぐらい体をくねらせている。生命力が強いようで長い時間水から出ているのに元気がある。「おじさん、この魚なぁ~に?」、おじさん「ライギョだよ・・」私「いらないなら、貰ってイイ??」おじさん「ズタ袋やるから、もってけ、でもな、こいつがいると鮒や鯉の稚魚がみんなやられるから河に戻すなよ、あとよ・・不味くて食えんけんな、この魚」。その時は何も考えず、もらえるならもらって帰ろうと考えた。ただ 袋に10匹も入れていると相当重い。帰りながら、どうするか考えあぐねた。このままじゃ死んじゃうしな・・・ 家に近づいて来たとき、通りかかったのが例の豪邸の池であった。「よし 此処に放したろ!」。80センチ級の大きなライギョ君たちは、10匹とも元気に錦鯉の池に解放してあげたのだった。その時はライギョ君たちの命を救ってあげたと良い気分になっていたが、帰って父親にその話をしたら「お前、とんでもない事するやっちゃな!」と呆れられた。

 話がまた逸れたが、食品に関して某国は、何やかんや色々な事があり過ぎてスーパーマーケットへ行っても買いたいと思うものが無い・・・。偶に日本に帰国しスーパーへ行くと売っている物全てが美味そうで買いたくなるが、そういう感覚が某国では全く起らない。どうやって危険を避けるか、そっちの方が重要なのである。                          (2017年4月記)

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ボクの某国論
其の二十八 地に落ちた信頼の巻